トレーニング効果を最大限に引き出すには、栄養摂取のタイミングが重要です。
トレーニング後1時間以内にプロテインを飲むという、運動後の栄養摂取方法はすでに常識化したといっても良いでしょう。
また、戦略的に栄養摂取を行い、積極的にサプリメントを使用するトレーニーたちは運動後だけでなく「プレワークアウト」つまり「運動前」に、パフォーマンスアップのためのサプリメントを摂取しています。
運動前に体の内側から働きかけてパフォーマンス向上の準備をしておくことが、今やトレーニーの常識になりつつあります。
とはいえプレワークアウトに何を摂取すべきなのか、また摂取することで効果は期待できるのか、疑問に思う方も多いと思います。
そこでここでは、プレワークアウトサプリとは何か、どの様な種類のものがあるのか、どの様な効果が期待できるのか、安全性や摂取する際の注意点などをまとめたいと思います。
プレワークアウトサプリとは
プレワークアウトサプリとは、どのような位置付けのサプリメントなのでしょうか?
どのような役割を果たすのでしょうか?
サプリメントの役割
サプリメントは「栄養を補助するもの」です。
食事から十分な栄養が摂れない場合、それを補う役目を果たすものですが、サプリメントの中には単なる栄養素の補助だけではなく、運動パフォーマンスをアップさせる効果を持つものがあります。
そういったサプリメントを「エルゴジェニックエイド」と言います。
「プレワークアウトサプリ」も単なる栄養補助目的というよりは、運動パフォーマンスの向上を目的に摂取するエルゴジェニックエイドという位置づけになります。
プレワークアウトに摂取したい成分
プレワークアウトサプリには、高強度トレーニングの際に素早くエネルギーを作り出すサポートや、血流促進により持久力や集中力をアップさせる働きのあるアミノ酸などが広く用いられています。
プレワークアウトサプリとして摂取されることが多い成分は、次のようなものがあります。
- クレアチン
- カフェイン
- アルギニン
- シトルリン
- ベータアラニン など
ここではNO(一酸化窒素)系のサプリメントとして注目される、アルギニンとシトルリンを中心にプレワークアウトサプリを考察します。
NO(一酸化窒素)系のアルギニン、シトルリン
アルギニンとシトルリンの特性を知り、プレワークアウトサプリの有効性について考えます。
NO(Nitric Oxide)=一酸化窒素とは
窒素(N)と酸素(O)から成る化合物で、常温において無色・無臭の気体で存在します。
一般的に窒素酸化物は光化学スモッグや酸性雨の原因にもなる汚染物質なのですが、一酸化窒素(NO)は体内でとても重要な働きをしているのです。
体内において一酸化窒素は、心臓と血管の健康に欠かせない物質で、主に血管の内壁を覆う組織=血管内皮でつくられています。
細菌やウイルスを攻撃したり、血管拡張作用や、神経伝達物質としても働きます。
ここでは、トレーニングに影響の大きい、血管拡張作用に注目したいと思います。
一酸化窒素は体内では、アルギニンから作られることが多く、アルギニンから生成した気体の一酸化窒素は主に血管内皮細胞から拡散します。
一酸化窒素が血管平滑筋細胞に到達すると、「c−GMP」と呼ばれる物質を増やして筋繊維を緩めます。
そのために血管が拡張します。
アルギニンは食べ物から体内に補給されます。
しかし、アンモニアを尿素に変えて無毒化する経路=「尿素回路」において、「オルニチン」や「シトルリン」などからも作られます。
NO系サプリメントにアルギニンだけでなく、シトルリンが用いられるのはこのためです。
アルギニン、シトルリンの効果
「アルギニン」や「シトルリン」を運動前に摂取すると、体内にNO(一酸化窒素)が産出され、血管が拡張し血流が促進されます。
その結果、瞬発力・持久力や集中力のアップ、代謝の向上、疲労回復など、運動パフオーマンス向上に有効な様々な効果が期待できるのです。
アルギニンとシトルリンの特性を個別に見ておきましょう。
アルギニンとは
アルギニンは体内でも合成されるため、非必須アミノ酸に分類されています。(子供は体内で合成されないので、食事により摂取しなければいけません。)
しかし加齢とともに体内での生成量が減るため、食事から摂取する重要性は増します。
前にも述べたように、アルギニンが体内で働く際、一部のアルギニンからNO(一酸化窒素)が発生し、血管拡張作用、血流促進作用が生じます。
この他にも重要な働きがあります。
アルギニンは成長ホルモンの分泌を促進するのです。
脳の下垂体に作用し、筋肉量のアップに重要な成長ホルモンの分泌を促進し、またエネルギー産生を促進する作用もあります。
またアルギニンには、疲労物質の一つ「アンモニア」を解毒する作用があるため、抗疲労効果が期待されています。
シトルリンとは
「シトルリン」はスイカから発見されたアミノ酸です。
カラハリ砂漠の野生スイカに特に多く含まれています。
強い紫外線と乾燥した劣悪な環境でも野生スイカが生育できるのは、抗酸化作用の強いシトリンを多く含んでいるためだと考えられています。
シトルリンは、タンパク質と結合せず、ひとつのアミノ酸として細胞や血管を巡りながら、必要な時すぐに働けるような「遊離アミノ酸」として体内に存在しています。
シトルリンは体内でアルギニンに変換されるという特徴を持ち、アルギニンと同様に一酸化窒素を作り出します。
シトルリンは、アルギニンからのNO産生が飽和状態になった時に、さらにNOを作り出します。
アルギニンからのNO産生は飽和状態になりやすいので、シトルリンの存在が重視されています。
いずれにしろ、シトルリンもアルギニン同様血管の機能維持に不可欠で、血管拡張作用、血流促進作用を持ちます。
トレーニング的視点に立って言えば、「パンプ感」=「筋肉に大量の血液が送り込まれ、膨張した感じ」が得やすくなり、筋肉量の向上が期待できるのです。
NO系サプリの効果まとめ
アルギニンやシトルリンを用いたNO系サプリメントに期待できることを以下にまとめます。
筋肉量の向上
NOの血管拡張・血流促進により、酸素やアミノ酸、脂肪酸、グルコースなど栄養素の運搬量を増加し、筋肉の肥大に有効に働きます。
持久力を高める
NOの血管拡張・血流促進により、体内における酸素の運搬量が増すことで運動の継続に
必要なエネルギーがより多く生み出されます。
また、エネルギー源となるグルコースの取り込みが促進されるため、疲労しにくく、持久力がアップします。
回復力の向上
運動時には体内の糖分を分解してエネルギーとして利用しますが、その際に疲労物質であるアンモニアが発生します。
アルギニン・シトルリンはこのアン モニアの除去に役立ちます。
自分にあったプレワークアウトサプリを選ぼう
プレワークアウトサプリとしては様々な商品が出回っています。
ご自分の使用状況や体質に合わせて適切な製品を選択する目安に、以下の情報をお役立てください。
成分ブレンド系
プレワークアウトに有効な何種類かの成分をブレンドしたタイプの商品
1)CELLUCOR(セルコア社 )C4 EXTREME(C4エクストリーム)
クレアチン硝酸エステル、アルギニン、N-アセチル-L-チロシン、ナイアシンアミド、葉酸など含有。
Amazonや楽天だとなかなか在庫が無いので、iHerbで探した方がいいかも。
2)マイプロテイン プレワークアウト
アルギニン-アルファ-ケトグルタル酸、L-カルニチン、ベータアラニン、BCAA、クレアチン一水和物、シトルリン を含有。
その他様々なプレワークアウトサプリを展開しています。
安い。
3)ゴールドジム BCAAアルギニンパウダー
BCAA(バリン・ロイシン・イソロイシン)とアルギニンを配合。
アルギニン単体
1)NOWFoods (ナウフーズ社) L−アルギニン 1000mg
錠剤(1錠1000mg)
アルギニンは単体では非常に強いアルカリ性です。
そのため消化器官に大きなダメージが生じやすく、胃痛や下痢、胸やけなどの症状が出ることがあるので、注意しましょう。
2)BULKSPORTS(株式会社 ボディプラスインターナショナル) シトリックアルギニン
粉末。アルカリ性のアルギニンを中和させるクエン酸を配合。
シトルリン単体
BULKSPORTS(株式会社 ボディプラスインターナショナル)シトルリン
粉末タイプ
付属スプーン1杯(2.2g)あたりL-シトルリン2.200mg。
アルギニン・シトルリンのミックス
1)NOW Foods(ナウフーズ社)Arginine Citrulline
タブレット
アルギニン配合量 1,000mg
シトルリン配合量 500mg
2)FINE JAPAN(株式会社ファインジャパン) シトルリン
タブレットタイプ
大阪大学との共同研究。
8粒(2gあたり)
L-シトルリン 800 mg
L-アルギニン 500 mg
副作用とドーピング
先にも述べたように、アルギニンは非常に強いアルカリ性です。
単体で用いるのはお勧めできません。
アルカリ性を中和するためにクエン酸と一緒に摂取して、胃腸のダメージを避けましょう
特に、消化器官があまり強くない人は注意して摂取してください。
また、血管拡張の薬などを服用している人は、医師や薬剤師の指導を仰いでください。
ドーピングに関しては、基本的には問題のない成分です。
ただし、何種類かの成分がミックスされているものや、海外の製品については注意が必要です。
詳細な内容確認ができない場合は、信頼のおける国内メーカーの製品を選択することをおすすめします。
摂取タイミングとその他の注意点
プレワークアウトサプリを使用する際には、各メーカーが推奨する使用量を守って摂取しましょう。
運動する1時間~30分以上前に摂取するならタブレットタイプを、運動の直前に摂取するなら吸収のよい液体やパウダータイプがオススメです。
プレワークアウトまとめ
プレワークアウトサプリを摂取する上で一番注意しなければいけないのは、ベースになる毎日の栄養摂取です。
日頃の栄養摂取が不十分では、エルゴジェニックエイドであるプレワークアウトサプリを利用しても、トレーニング効果の向上は期待できません。
プレワークアウトサプリの効果を最大限に得るためにも日々の食事、栄養摂取を万全にすることが大切です。